そのキスで、覚えさせて
「遥希、ちゃんとプロポーズしてくれてないじゃん!
あたしは順序を踏まないと嫌なの!
それに……
駄目かもしれない」
想像するだけで、身体が震えて泣きそうになる。
それでもあたしは、平静を装って言った。
「子供が出来ちゃったって言ったら、また事務所に怒られるかも」
遥希は何も言わず、あたしを見た。
「もう、あんな思いするの嫌だよ」
やっと安心して遥希といられるようになったのに、また引き裂かれるかもしれない。
あの時の恐怖は、トラウマのようにあたしの中に残っている。