そのキスで、覚えさせて







遥希の家はすごい。

でも、彼の家も凄かった。

まさしく豪邸、さすがと言わんばかりの。

その豪邸で……

吹き抜けのリビングのふかふかのソファーに、あたしは座っていた。






彼は派手な女性が好きなのだと思っていた。

だけど……



「蒼の妻です」



そう言ってあたしにお茶を出してくれたのは、どこにでもいそうな落ち着いた女性だった。

そして、お茶に金箔でも入っているのかと思いきや、



「唯ちゃん!

このお茶、どこから来たやつ?

美味しくない?」



驚いている彼に、



「ペットボトルのお茶、温めただけ」



頰を染めて言う妻。

まさかの事態だ。



そして彼はなぜか



「すごいねぇ!

ペットボトルのお茶って、こんなに美味しいんだぁ」



なんて感動していた。

そんな蒼さんの豪邸に、あたしはいた。



< 68 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop