A・O・I
「あ~……やっぱり寒い日には鍋だよね~!……美味しそ~!!」
グツグツと沸騰している鍋を囲みながらビールを片手に待っていると、蒼が取り分けてくれた。
「硝子さん……熱いから、急いで食べて火傷しないようにね?」
「うんうん分かってる!!…………熱っ!!」
「あぁ~言った傍からこれなんだから……はい、水。」
呆れ顔で笑っている蒼から、急いで水を貰う。
「うぅ~……熱いけど…、めっちゃ美味しい~!!」
「ふふ……分かったから今度は火傷しないように、ゆっくり食べてね?」
「は~い!!」
素直な返事に蒼の顔もつられて綻ぶ。
今なら酔った勢いで、なんでも言えそうだ。
私はずっと引っ掛かっていた昼間の話を切り出した。
「蒼……?あのさ……」
「何?味少し濃かった?」
「ううん……違くて。」
「ん?」
「今度さ、お見合いする事になってさ。」
「……お見合い?……誰が?」
「こんな歳して恥ずかしいんだけど……私が。でも、お見合いって言っても、取引先の顔を立てた接待みたいなもんだから、直ぐ断るつもり!今更こんな年増あっちも気に入らないだろうしね!だから、何も今までと変わらないから。一応報告までー」
「お見合いなんてしないでよ。」
いつもとは違う真剣な目に射抜かれて、私は一瞬言葉に詰まった。
「えっ?」
「だって、お見合い相手が硝子さんの事気に入るかも知れないし。」
「かなりスペック高い人みたいだから、きっと他に若い彼女いるよ。私と同じで上司の手前断れないだけだって。」
「可能性はゼロじゃないだろ!!」