sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「私の方は忘れたつもりだったんですけど、奥様だった方と離婚されてすぐに連絡が来たんです。自分は結婚には向かなかった。だけど、誰かに家のことをしてほしいと」
祖父が独り身なのは離婚した……というか、祖母だった人に出ていかれたからだという話はちらっと祖父本人から聞いたことがある。
そのときすでに母がいたはずだから、家事も子育ても任せられる誰かが必要だったんだろう。
祖父自身は、社長になるために忙しかった時期だろうし……。それで、元カノであるみーちゃんに頼ったわけだったんだ。
「でも、それって我がお祖父ちゃんながらちょっとひどいような……」
「お嬢様もそう思われるでしょう? だって私と再婚する気はないのに家政婦になれって言うんですよ。なんて男だと腹が立ちましたよ最初は」
言葉の割には、穏やかに話すみーちゃん。最初は、ってことは、今はもう怒っていないということだろうか。
「でも。やっぱり一度は恋をした人だから、そばにいられるだけで嬉しかった。それに、千那お嬢様のお母様……千尋(ちひろ)様が、ものすごく私に懐いてくれたんです。本当の母親がいなくなって寂しいはずなのに、いつも笑顔でした。そして、今の千那お嬢様のように、私を“みーちゃん”と呼んでくれて、私はそれがとっても嬉しかったんです」
「そうだったんだ……」
母もきっと、みーちゃんのことを心から慕っていたに違いない。私と母は、親子二代で、あなたにに支えられていたんだね。
初めて知る不思議な縁をしみじみと噛み締めていると、みーちゃんが遠慮がちに話題を戻す。
「だから、千尋様の子である千那様も自分の孫のように可愛いんです。そんな千那様を傷つけた殿方のことは、やっぱり許せない。旦那様だけじゃなく、綾辻という弁護士にも洗いざらい事実を白状させたいけれど……千那様のお気持ちはどうですか?」