sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


きっとこれからベッドに移動して……いやもしかしたらそこまで待てないタイプの人かもしれない。そしたら、もう事は始まってしまう?

っていうか、むしろもう始まってる?

あれこれ妄想して頭の中がパンクしそうな私の耳に、柔らかい唇がちゅ、と音を立てて触れた。

や、やっぱり、もう始まってるっぽい……! 頑張るのよ、千那。接待という名目なんだから、私からもリードしないと!

耳に触れる熱い吐息にぞくぞくしながらそんな意思を固める私に、綾辻さんがかすれた声で囁く。


「ねえ、千那」

「は、はい」

「……黒幕は誰なの?」


え……? くろ、まく……?

予想もしなかった単語が飛び出し、思わず固まってしまう。

綾辻さんは何も反応を示さない私に深いため息をつくと、うっとうしげにスーツのジャケットを脱いでベッドの上に放り、私の腕を掴んで無理やり体を反転させた。

トン、と冷たい窓ガラスに背中が触れて、彼の手が私の顔のすぐ横に置かれる。

今まで乱れることのなかった彼の髪が、一束だけ額にかかって、その姿にどきりとした。

なんだか、急に別人になってしまったような……。

彼の変貌ぶりに目を見開いていると、綾辻さんは私を蔑むような冷たい声で続けた。


「俺を嵌めようなんて百年早いんだよ」


……そんな。気づかれていたの? いつから? 最初から?

だとしたらどうして待ち合わせ場所にのこのこ現れたの?


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