ぼくのセカイ征服

あまりの痛みにうずくまる僕を尻目に、男は少女を追い詰めていく。
そして。
男は僕を殴った手をゆっくりと開き…スミレの腕をがっちりと掴んだ。
…何で？

「うへへへッ！捕まえたぁ…。お前は俺の好みの顔をしてやがる…先ずはお前から可愛がってやるぜぇ…！」

…とのことだった。
ああ、スミレよ。哀れな。
余談ではあるが、この男、よく見ると、アニメのキャラがプリントされたＴシャツを着込んでいるではないか。どうやら、かなりの変態らしい。

…ああ、もう、これで全て終わった。完全にゲームオーバーだな。


…この男の人生は。


「…で…」
「あぁ！？」
「…汚い手で…」

憎しみという感情が。
激しい憎悪が。
そのまま口から漏れ出したように、スミレは呟く。
半瞬間後。
華麗に…そして、婉麗に…かつ、艶麗に…
スミレは左の胸ポケットから『何か』を素早く取り出し、中指をその『何か』の穴に突き入れて、二、三回転させ、その尖端が親指の側に来る形で強く握り締めた。
そして。
そのまま、その『何か』の尖端を男の喉元に突き付け、呟きの続きを零す。

「よくもまぁ、私に触れようと思ったものだわ…」
「…ッ！？」

男は、完全に気が動転している様だった。
それもそのはず。
男は、冷え切った、見ているだけで凍えるようなスミレの瞳に見詰められているのだから。
それと同時に、スミレの瞳にも負けない程、冷たい輝きを放つ物体が、己の急所に突き付けられているのだから。

…自分の生命が、脅かされているのだから。

「…これで、自分の立場がわかったかしら？」

そう言うと、スミレは男の手を、引きはがす…というより、払いのける、といった感じで振り払った。
もちろん、男の喉元に『何か』を突き付けたままで。