ぼくのセカイ征服
振り向くと、そこにはヤツがいた。満面の笑みを携えたソイツは、真っ直ぐにこちらへ向かって来て、僕の隣の席に座る。

「お前、部活を作るんだって?何部だよ?」

気安く話し掛けてくるコイツの名前は、『瀬河 翔』(せがわ しょう)。通称、『ショウ』。成績優秀、スポーツ万能。(万能とは言っても、何故か野球だけは苦手らしい)背も高く、おまけに顔まで良い。羨ましいほどに完璧な男だ。しかし、少々、自己陶酔が過ぎる。簡単に言えば、ナ〇シストなのだ。本人は自覚していないようだが、あまりのナル〇ストぶりに、陰では『ナル男』と呼ばれているらしい。しかも、目立つ外見のせいで、しばしば先輩にからまれたりする事もある。哀れなヤツだ。
まぁ、そんなコイツは、僕が友人と認めた唯一の『男』なのだが。
僕がコイツに初めて出会ったのは、たしか小学生の時だった。同じ学校ではなかったが、結構近くに住んでいた。正直言って、第一印象は良くなかった。何か、言い知れぬ気持ち悪さを感じたのだ。僕は、コイツに関わる事だけは避けたい。と、そう思った。
なのに、コイツはそれを察したかの様に…そしてその当て付けだといわんばかりに、俺に話し掛けて来た。あれだけ話し掛けられて、友達にならないヤツがいるのか、というほど話し掛けられた。始めの内は、多少の嫌悪感はあった。が、話してみるとなかなか面白いヤツで、嫌いにはなりきらなかった。嫌いにはなりきれなかった。そのため、『悪友』とでも言うのだろうか、とにかく、そんな関係になったわけだ。もちろん、僕達の仲は悪くはなかった。
でも…
時間は、残酷だ。
時の流れは、誰にでも平等だ。そして、平等だからこそ、不平等が生じる。
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