ぼくのセカイ征服
「冴えないツラしやがって…人の話はちゃんと最後まで聞けって習わなかったのか?」
「冴えないツラで悪かったな…」

話、だと?ただの挨拶みたいだったじゃないか。それ以前に、僕は相槌を打っただけで、お前との会話は始まってすらいないし。

「ま、その冴えないツラもたまにはいいけどな。」
「……」

こいつ、まだ言いやがるか。相変わらず欝陶しいヤツだ。

「…で、部員は?入部するヤツ、もうあらかた決まってんだろ?」
「…何の事だ…?」
「はぁ!?知らねぇのかよ!?新規登録の部活は、創部から一週間以内に5人以上部員を集めないと廃部になるんだぜ?」
「…!?」

何だって!?露ほども知らなかった。なんてこった…。せっかく、せっかくこの日を無事迎えられたというのに。
なのに。
一難去ってまた一難…か。
ならば、仕方無い。不本意ではあるが、僕はショウに、こう言うしかなかった。

「じ、じゃあ…ショウ、お前、僕の部活に…」
「悪ぃ。バスケ部、部活の掛け持ちは禁止されてんだ。監督が厳しくてよぉ…」
「おいおい、昔からの付き合いだろ!?」
「なぁに、お前ならすぐに4、5人くらい集められるさ。」
「その4、5人の中にお前はいないのかっ!?」
「え〜?ダメなモンはダメだしなぁ…。それに、俺が入ると部室が女子どもで氾濫するぜ?」
「…わかったよ…」

このナルヤロー…いつか殺す。まぁいい。壮大な計画には、計算外の事態は付き物だ。そう割り切って、コイツを部員にするのは諦めるしかないな。

「どうした…?急に黙り込んで。俺が入らないのがそんなに寂しいのか?」
「フン、誰が…」
「おっ!?ヤベェ、もうこんな時間だ!」

ショウは不意に時計を見て、部活開始の時間が迫っている事に気付いたらしい。

「じゃあ、俺は部活あるから…お前も早く職員室に創部届けを出しに行ったらどうだ?」
「言われなくても…」
「じゃあ、また明日な!」
「ああ…」

僕の力の無い返答を聞くと、ショウは一目散に教室を飛び出した。大きな足音が次第に遠ざかっていく。

「…お前こそ、廊下は走るな…って習わなかったのか?」

誰に聞かせるでもない小さな呟きは、僕以外、誰もいない放課後の教室の寂しげな空気に吸い込まれた。
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