呪われ姫と強運の髭騎士
 ソニアの儚い呟きにクリスは、優しく彼女の頭を撫でる。

「クリス様……」
「大丈夫! 私がいます! 私は『強運』の持ち主なのですよ」

「強運?」
 
 そうです、とクリスは厚そうな胸板を反りあげて見せる。

「今までも私は、生きるか死ぬかの戦や事件に巻き込まれましたか――ほら! ご覧の通り、五体満足、どこも不自由しておりません。それは私の側で戦ってきた者達にも当てはまります――なので、いつも私が戦いに出向くと『運は全てクリスフォード・コルトーに持っていかれた』と敵側は慄くものです」

「……ふふ、まるでクリス様が、幸運を吸いとっているような言い方」

「私は、運を吸いとって周囲にばらまいているようですよ。……あれ? 何だか人外生物みたいな感じになってきましたな……?」
 
 視線を上にして「言い方がこれでは」と腕を組んで考え込むクリスを見て、ソニアは手を口に当てて笑いをこらえる。

「やだ……! クリス様ったら……!」
 
 笑いを堪えるのに必死な様子のソニアを見て
「やはり姫君は、笑っていた方が良いですな。周囲を華やかにさせてくれます」
と安心したように言った。

「だってクリス様が笑わすんですもの!」

「大いに笑ってください。そして邪悪な気配を吹き飛ばしてしまいましょう! 姫が笑って過ごせるなら、私はどんなことでも致しますよ」
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