呪われ姫と強運の髭騎士
「パメ……ラ……、パメラ……!」
 
 ソニアは泣きながら一番の親友の名を呼ぶ。
 
 同時、フワリと自分の背中を擦る手に気付き、泣き晴らした顔を拭うこともしないでゆっくりと振り向いた。
 
 そこには、心配そうに眉尻を下げて自分を見つめるパメラがいたのだ

「何かあったの? パトリス王やセヴラン様や……あの騎士・・・・が神妙な顔で部屋から出てきたから。外に控えている侍女に無理を言って入れてもらったの。――でも良かったわ。それが正解だったみたいね」
「パメラ!」
 
 まるで幼子をあやすように抱き締められて、ソニアはパメラの身体に腕を回す。
 
 彼女の温もりに安心したように再び泣き出した。

「パメラだけよ! パメラだけだわ! 私自身を見てくれるのは! 誰も私の財産だけ心配しているだけなのよ!」
「ソニア……そうよ、誰もあなたのことなんか考えていないわ。私だけ。私だけがソニアのこと想ってる」
「パメラ……」
 
 パメラがいつもと様子が違うことに気付き、ソニアは顔をあげた。
 
 彼女の顔が近い。
 
 修道院でも頬や額を寄せあったことが何度もあった。だからこんなに顔が近いことは度々経験している。
 
 しかし――今夜はわけが違う、パメラの表情を見て感じた。
 
 自分を見る漆黒の瞳がやけに艶かしい。無理に微笑みを作るその口は隠微に上がっている。
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