呪われ姫と強運の髭騎士
「ソニア、私も貴女と同じ……。叔父の借金のために、とても歳の離れた男の元に嫁ぐことが決まってしまったの」
「なんてこと……!」
「紹介されたけど嫌な人!  人のこと舐め回すように上から下まで見て、『これなら良い後継ぎが出来そうだ』って笑うのよ!気持ち悪いったら!」 
「なら!  私が貸し付けるわ!  パメラが承諾していない結婚なんて……!」
 
 ありがたいけど、とパメラはソニアの申し出を断る。

「そんなことをしたら、叔父が付け上がるわ……。調子に乗って、ソニアの元に乗り込んでくるかもしれない――平気でやる人なのよ……。ソニアとの友情を壊したくない……」
「パメラ……」
 
 二人、項垂れる。

「私は、借金返済の人身御供。ソニアは先祖の過ちの尻拭い……。私達似た者同士ね……」
 
 パメラがやりきれないと、自嘲する。

「修道院から出て、良いことなんて無かった。ソニアもでしょう?」
「……一つ、あるわ」
 
 それはパメラと会えたこと――そう言おうとしたが
「嘘よ!」
とパメラが急に激昂して、ソニアは驚いて口を閉ざしてしまった。

「無いでしょう? 一つも!  無いはずよ!  生きていたくないでしょう?  ねえ!」
 
 ソニアの肩を掴み、揺さぶるパメラの目付きが怖い。

「パ、パメラ……?」
 
 修道院にいた頃のパメラと違う。
 
 穏やかで、周囲を柔らかい雰囲気に導いていた彼女と違う。
 
 黒い瞳より暗い思いを溜めた眼差しなのに、不気味なほどにぎらつかせて自分を見る。
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