呪われ姫と強運の髭騎士
 そうだ――相手は超常現象を操る異界の者。
 
 しかも、最悪な者に力を借りている。
 
 もっと厄介なのは、自分が生前争っていた相手の力を借りていることに、気付いていないことだ。

「……彼は、ファーンズ司祭は、本当に自分の霊魂が堕ちたことに気付いていらっしゃらないのかしら? もしそうなら、気付けば自分の行いの罪深さの恐ろしさに退散するのでは無いでしょうか? そうだったなら、お助け出来ないでしょうか?」
 
 自ら気付くのは難しい。
 
 凝り固まった概念と性格、それに周囲の反応でより意固地になってしまうこともある。

「話を聞いただけですが、祖父と司祭は拗れに拗れた気がします。お互いに引けなくなってしまった結果ではないかと感じました」
「……姫は本当にお優しい人だ」
 
 感心して思わず呟いたクリスの台詞に
「『姫』は止めてくださいと言ったはずです!」
とソニアに叱られ、クリスは笑いながら頭を掻く。

「これは失礼しました! しかし、彼が気付いて改心すると容易いのですが、きっと難しいでしょう。時が経っても彼の憎悪は消えてるどころか……クレア家を滅ぼすことを魂に刻んでしまったのだと思います。身体は時と共に癒えましょうが、魂は……私達の領分ではないと……」
「そうですか……」
 
 ソニアは首に下げたロザリオを握った。

「今はパメラ様をお助けして、貴女をこの呪いから断ち切る策を考えましょう」
 
 クリスの言葉に、はい、とソニアは頷いた。
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