呪われ姫と強運の髭騎士
 そんな様子のソニアに、クリスはこんな状況なのに可愛らしいと思ってしまう自分に苦笑いをする。

「申し訳ない。実は私も詳しくは王に聞いていなかったのです。ただ『呪われたクレア家の最後の当主を、悪魔の手から救いだしてほしい』と。――私も、その悪魔に様変わりした司祭は、数ある悪魔の誰の力を借りているのか分からなかった。何故『髭』を生やせと神からお告げがあったのか? 教皇や王にも分からず手掛かりを探すのが先だったのです。下手に話をして、ソニア様のお心を乱すわけにはいかないと黙っておりました」
「それで婚約者と名乗って……」

 はい、とクリス。

「神の啓示で私が選ばれたのは、単に私が加護魔法を修得した『ディヤマン』という騎士の最高位にいたからでしょう」
「それで――分かったんですか? 『髭』を生やさなければならない理由は?」
「ええ! ヒントは、クレア城に飾られた絵画にありました!」
「絵画……。確かにクレア城には数多く絵画が飾ってありますけど……。関係があるとしたら宗教画ですよね」
 
 ソニアは頭を捻り回想する。
 
 祖父のウィリアムは絵画のコレクターだったので、城に飾られていない絵画まで数多く保管されている。

 でも、クリスは今『飾られた』絵画と言った。現在、城の壁に飾られている宗教画のうちの一つだろう。
 
 それに『髭』が関するもの……

「――あ! もしかしたら!」
 
 当てはまる絵画が一つある。

「昔、お祖父様が夢で何度も見たと言って、絵師に描かせたものがあります!」
 
 そこでクリスが「シッ」と人指し指を立てた。

「相手はどこで何を聞いているかわかりません。対策を講じられたら大変ですからね」
 
 そう言った。
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