呪われ姫と強運の髭騎士
◇◇◇◇
 夏至祭――
 
 真夏の夜の夢といわんばかりに、民も貴族も各々好きな衣装を着ける。
 
 それは、妖精を模倣したり動物の姿をしたり――様々だ。
 
 今年の夏至祭は、悪魔や天使に祭司に騎士。

 そして姫の姿で模倣した仮装が民に大流行だ。
 
 勿論、ソニアも仮装を意識したドレスを着込む。

(とはいうものの、自分の模倣なんて嫌だし、悪魔なんてコリゴリ)
 
 造った衣装は青緑のサテンのドレスに、妖精の羽をイメージした透き通る素材の生地を背中に縫い付けた。

 四枚の羽のうちの二枚は、手の人差し指にはめられるように指輪も縫い付けてある。
 
 ――そして
 
 夏至祭に必要なのは――マスク!
 
 マスクを付けても結局は知り合い同士にはバレまくりなのだが、秘密の香りが会場に漂うようで大盛況の秘訣の小物だ。
 
 ソニアも、白地に金のラメを唐草模様に貼り付けしたアイマスクを付ける。
 
 それだけなのに、鏡に写る自分が別人に見えてきて、いつもとは違うことが出来るような気がしてきた。

(クリス様に告白出来そう!)
と、勇気も更に湧いてきた。
 
 戸を叩く音にソニアはシャン、と背筋を伸ばす。
 
 侍女がワンピースの裾を摘まみ、軽く会釈をする。

「クリスフォード様が、おみえになりました」
「すぐに行きますとお伝えして」
 
 ソニアは支度を手伝っていたパメラと、衣装の確認をしながら侍女に伝える。

「楽しんできてね、ソニア」
 
 励ましを含んだパメラの言葉に、ソニアは微笑んで頷いた。
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