呪われ姫と強運の髭騎士
「今夜の夏至祭は妖精の仮装でしたか。よくお似合いですよ」
 
 言われ、ソニアの頬が染まる。

「クリス様は……?」
 
 普通の、舞踏会や夜会に着るようなドレスコートで、何かを模倣しているように見えない。

「色々考えたのですが、どれも今宵には合わない気がしたのです」

 と歯並びの良い白い歯を見せた。

「……そうですか」
 
 きっと好きなお方が見ても良いように――なんだろうな。
 
 昨日、一緒に王とご相談をしていたという女騎士の方なんだろう。
 
 チクチクとソニアの胸が痛んだ。

(本当は、今夜はその方と過ごしたかったはずよね……)
 
 彼女に申し訳ない気持ちも余計に胸を痛くさせた。

 
 ――ごめんなさい。

 
 ソニアは痛みと共に謝罪を飲み込んで、クリスに微笑む。

(今夜だけ、今夜だけはどうかクリス様と過ごさせてください。きちんと告白をして自分の気持ちに区切りをつけますから……)
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