呪われ姫と強運の髭騎士
「王がセヴラン様を、誰かの元に修行に行かせようとご相談があったのです。修行に行かせる場所も任せる相手も決まっていたのですが、そこまで行く道中をどうしようかという話でして。道中も修行の一環として見ようと、騎士二人に治癒師の計四人で向かうことに決まったわけです。その一人がアンリ様が申していた女騎士です」
「そうでしたの」
 
 ホッとしたのも束の間、ソニアの顔が悲しみに塞ぐ。

「騎士二人-と言うと……あと一人はクリス様……?」
「――のはずでしたが、丁重にお断りをしました。三ヶ月鍛え直しましたが……私では無理なようで……」

 力が抜けそうになるような溜息を吐いたクリスを見るにつけ、相当セヴランの反抗されたのだろうと想像できた。

「……それに私にも、やらねば後悔すると思った事があったのです」
 
 クリスの表情が変わった。
 
 息を飲むほどに真剣な表情で、自分を見つめている。
 
 その食い入るような眼差しにソニアは熱さを感じ、胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。

「本当なら、私から言うべきでした」
 
 そう言いながらクリスは、座るソニアの目の前で片膝をつく。
 
 そうして彼女の右手をそっと両手で包んだ。

「ソニア様をお守りして、貴女の困難に立ち向かう直向きさと勇気に私は胸を熱くしました。どんな辛い状況でも、相手を思いやる心をソニア様は、決してお忘れにはならなかった。たまに見せる憂いの表情に、私は貴女をいつも微笑みの絶やさないようにして差し上げたいと思っていた。私はもう四十近い男でしかも、武芸にしか秀でていない。それでも、貴女が願えば領地経営等の勉学にも励みましょう。毛深いのが嫌なら毎日剃ります。髭も気を付けます。貴女に嫌な思いは決してさせません。どうか、私とこれからの人生を共に歩んでほしい!」
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