呪われ姫と強運の髭騎士
「王子のくせに、ちんたら歩かない!」
「日が暮れるまでにこの森抜けないと危ないわよお。セヴラン、しっかり歩いてえ」
「盗賊にでくわしますぞ」
 
 この言いぐさ!
 
 しかもセヴランと呼び捨て!
 
 王子として敬う態度の欠片もなし!

「うるさい!  早く先に進みたいと言うなら何故、馬を用意しないんだ!  僕は歩き馴れていないんだ!」
「出発の際にも申し上げましが、これは『修業』の一環ですから。『なるべく自分の手足を使って、目的地へたどり着け』――それが王であり貴方のお父君のご命令です」

 とアニエス。

「何度も申し上げましたが、『修業の間はセヴランを王子として見る必要はない。普通の若者として接して鍛えてほしい』と王であり貴方のお父君のご命令です」

 とクレモン。

「そう!  私達は護衛もかねているけど、貴方を指導して教える立場でもあるわけ。この四人の中じゃあ一番ヘタレだしい。てか、『僕は歩き馴れていない』って威張るってありえなーい」

 とクララ。

(くっそおううう!)

「何度も何度も先程から同じ台詞を繰り返しても、まだご自分の立場を理解できないのですか?」
 
 アニエスが溜息をつく。

 呆れたような言い方とその吐息に僕は、ムッとして歩く速度をあげた。

 
 ――どうしてこうなった
 
 こうなった理由は、そう、自分の所為のせいだけど……
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