呪われ姫と強運の髭騎士
 クリスは、歴史的価値のありそうな調度品を物珍しそうに眺めながら、執事頭の後を付いていく。

「しかし怪奇現象で、素晴らしい家具や調度品が破損してしまうのは勿体ないことですな」
と言うが、間延びする言い方で残念そうには聞こえない。
 
 鎧や剣に価値を見出だすが、芸術品の目利きは、さほどではないのだろう。
 そこはさすがに兵役務めの者らしい。
 
 執事頭はそんな王宮騎士の称号持ちの騎士に話かける。

「実は何度か司祭をお呼びして、悪魔払いの儀式はしているのですが……」
「効果はないのですね」
「……ソニア様のお祖父様の代からですから、そう一筋縄ではいかないと分かっておりましたが、このままではソニア様のお命まで危うく……」

「その為に私が来たのです。最善を尽くす気でいます」

「貴方様は恐ろしくはございませんか? 配偶者と言うことでお命が狙われるというのに」

「戦場ではいつでも高額賞金首です。狙われるのは日常的でしてね」
 
 朗らかに笑うクリスを執事頭は驚きながらも、死を恐れないその様子に思わず口角を上げた。

「流石、王がお選びになられたお方だ」

「――いえ、それが私には不思議なのです」

「? それは?」
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