呪われ姫と強運の髭騎士
「――? クリスフォード様?」
 
 体格的にも存在感溢れた彼の気配が薄れてマチューは後ろを向く。
 
 階段を上がる前、小さな踊り場の壁を一心に眺めているクリスがいた。
 その壁には大きな宗教画が掛けられていた。

「それは先々代の公爵――ソニア様のお祖父様の時代に描かれた物でございます。何でも、夢の中で何度も現れた光景だそうで」

 ――そう言うことか

 
 クリスが呟き、同時に肩が揺れる。
 
 それは「クック」と含み笑いに変わり
「そう言うことか!」
と声をあげると、大きな笑い声を出した。

 
 その声は城中に響いたのは言うまでもない。
< 50 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop