呪われ姫と強運の髭騎士
 どちらが多いかと尋ねられれば、命にかかわらない悪戯紛いの物の方が断然数が上だ。
 
 というのも、その方が彼が素直に引っかかるので、小さな怪我でもダメージを負わせることが出来ると気付いたらしい。

「やんちゃな子供が仕掛ける悪戯みたいなものの方が多いですな――いや、可愛いものですよ。私も日頃の鍛練の一貫に加えさせていただいておりましてね。いやぁ、なかなか気が抜けない悪戯を考えてくれて血が沸き立ちます」
 
 そう話すクリスの目は輝き、身体からは充実感が溢れまくっている。

(――そう言うことなのね)
 
 楽しくてしょうがないんだわ、この方。
 前向きも良いところ。
 
 自分はポジティブだと思っていたけど、彼には負けるわ、とソニアは苦笑いをする。

「うーん、しかし思うのですが、姫君といるときが多いのですよね――もしかしたら嫉妬されているのかも知れませんな」

「――嫉妬?」
 
 クリスの見解にソニアは目を丸くする。
 
 メキメキ――鈍い音が聞こえてきて、頭上がゆっくりと影が覆う。
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