反逆の騎士長様


ぞくり、と体が震えた瞬間、クロウの顔つきが、さっ!と変わった。



「っ!止まれ!」



?!



突然、クロウが私の体を抱き込むようにして床へと倒れ込んだ。


状況を掴めずに目を見開いたその時、魔力で作られた刃が空中を飛び交った。



ヒュンヒュンヒュン!



息も出来ずに、必死で姿勢を低く保つ。



その時、私を庇うように抱き込んでいたクロウの肩が、微かに揺れた。

彼の口から、小さく、呻きのような声が漏れる。



え…?



どくん、と心臓が鈍く音を立てた瞬間、微かな血の匂いが鼻についた。



…!


まさか、傷を……?



体が強張った、その時。


クロウがすっ、と私を離して立ち上がった。


しかし、一瞬、よろり、と蹌踉めく。



「クロウ、怪我をしたの…?!」



「…大したことはない。俺は死なないと言っただろ。」



クロウは、弱る仕草を一切見せずに、迫り来る鎧達へと剣を向けた。



「俺は、“死ぬために”力を貸すと決めたんだ。あんたらの騎士長は、必ずジャナルの魔力を奪ってくれる。

…いくら傷を付けられようと、俺は“その時”を信じて、お前を守り抜くだけだ。」



…!



私は、その言葉に、はっ!とした。


もし、このままロッド様が呪いに負けて、王様達も救いきれなかったとしたら

私たちに加担をしたクロウは、どんな目に合わされるか想像も出来ない。


死ぬことの出来ない苦しみの中、ジャナルに痛めつけられることは確実だ。


それでも、ロッド様を信じて、私を守ると言ってくれた。


…絶対、その思いを無駄にはしない。


私も、ロッド様を信じているから。


全てが終わった後、また、みんなに会うために。


必ず、地下牢に張られた呪いの魔法陣を浄化して、王達を救い出してみせる…!


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