反逆の騎士長様



その時、二人のやり取りを見ていたヴェルが私達に向かって口を開いた。



『魔法の練習相手なら、ガルガルに頼むと良いじゃろう。

奴は、ちょっとの攻撃魔法じゃ傷付かない、頑丈な幹の持ち主じゃからのぅ。』



すると、ラントがヴェルに向かって口を開いた。



「…にしても、未だに命が宿った木の想像がつかねーな。

ガルガルって奴はどこにいるんだ?」



確かに…。



樹海に生えている木っていうのは聞いたけど…、ドワーフのヴェルの友達なら、すごく小さな木なのかな?



すると、ヴェルは歩きながら私達に言った。



『ガルガルは、根っこを地面に張り巡らせているから移動が出来ない。

この先にある、わしのツリーハウスの近くにおるはずじゃ。もうすぐ着く。』







ついに、ガルガルと会えるんだ…!


ヴェルの住んでいるツリーハウスも見てみたいな…!



私がそんなことを考えながら、胸を躍らせて一歩進んだ

次の瞬間だった。



グラグラグラッ!!



「「「『?!!』」」」



突然、地面が大きく揺れだした。


樹海の木々が、ざわざわと音を立てる。



「なんだ?!」



ラントが、動揺して辺りを見回した。


ロッド様が、眉を寄せて口を開く。



「…禍々しい魔力だ。

樹海全体に広がっていく…!」



…?!



異様な気配を感じる。



ヴェルが険しい顔をして空を見上げた

その時だった。



『ぐわぁぁぁぁあっ!!』



!!



樹海の奥から、苦しみにもがく声が聞こえた


私達は、ばっ!と声のする方へと視線を向ける。



『ガルガルの声じゃ…!

皆の者、急ぐぞ!!』



ヴェルがそう叫ぶや否や、私達は素早く頷いて走り出した。


樹海は、深い霧に包まれていく。



…まるで、異世界に誘い込まれているみたい



その時、前を走っていたロッド様が、私の手を、ぱしっ、と取った。


見上げると、彼の碧眼が淡く輝いている。



「姫さん。不安がる必要はないが、俺の側を離れないでくれ。

嫌な胸騒ぎがするんだ。」



…!



ロッド様の、力強く少し切迫した声に、私は大きく頷いてロッド様の手を握り返した。


私達は、ヴェルの背中を追いかけるようにして深い樹海の奥へと入って行ったのだった。


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