【B】眠らない街で愛を囁いて

★


「田中さん、お忙しいところに誘ってしまってすいません。

 ちょっと今日、仕事で嫌なことがありまして、
 田中さんとゆっくり過ごせたら、何か解決策が出てくるかなーっと」

「私もなんです。
 職場に私のこと目の敵にするお局様がいるんですねー。

 今日もちょっと間違えただけで、ガミガミ説教され続けて気分萎えすぎなんです」


「あぁ、そんなことがあったんですねー。
 さて少し6階で食事でもしていきましょうか?

 話を聞くくらいしか出来ませんが、私で良ければお付き合いしますよー」」
 

★



聞くつもりはなくても、そんな会話が聴覚を刺激していく。



「あぁ、貴方もいかがですか?
 他の会社の方と交流するのも、時にはいいもんですよ」



そういってにっこりと笑って俺に視線を向ける。



「お誘い頂けて有難うございます。
 まだ仕事が残っていますので今日はやめておきます。
 皆さんで楽しんできてください」



当たり障りなく、社交辞令を並べて断るとオフィスに帰る前に何かを調達しようと、
二階へと続くコンビニへと向かった。





「いらっしゃいませ、こんにちは。
 ただいま、フライドチキンが揚げたてです。

 いかがですか?」




元気よく飛び交う声に、オウム返しで「いかがですか?」っと続けられたその声に、
俺は店内の隅々まで声の主を探し続けた。



お菓子コーナーの一角で、腰をかがめて品出しの作業を続ける『かなめ』の姿がそこにあった。



「いらっしゃいませ」


近くに行くと、彼女は俺の通り道を確保するように立ち上がって端によると、
お辞儀と共に挨拶をする。



思わず足を止めて話しかけようとした時、
『レジ応援お願いします』っと、もう一人のスタッフの声が店内に響く。



「お客様すいません。失礼いたします」っと、
理を入れた後、前を通り抜けてカウンターの中へと消えていく彼女。



そんな仕事を続ける彼女へと、視線は釘付けになる。



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