【B】眠らない街で愛を囁いて


人間関係をスムーズに構築できなくなった俺が居た。
そんな俺を傍でサポートし続けてくれたのは、お父さんと兄貴たちだった。


俺が引きこもりの生活から前進を始めた頃、B.C. square TOKYOへ養父が訪ねてきた。



俺が馬上の家を追い出されて四年が過ぎた頃だった。


養父は、貴江の異常行動に初めて気が付いたみたいだった。


そして俺を恋愛の対象としてしか考えられなくなった貴江を助けるために、
もう二度と貴江と会わないでほしいと告げた。




俺だってもう、うんざりだ。
俺には今の生活がある。



そして……叶夢に出逢った。

もう貴江のトラウマのからも解放されると思っていた矢先、
俺の生息している場所に突然、貴江が姿を見せた。



俺の名を『千翔』と親しげに呼んでくる貴江の存在に吐き気すら覚えた。




同じ職場でスタッフ同士になってしまった貴江と叶夢。


叶夢の存在のことを貴江が知ってしまったら、
気が付いてしまったらと思ったら、これまでのことを思ってゾッとした。



貴江の前では、叶夢が特別な人だとさとられてはいけない。

それが叶夢を守る最大の防御のように思えて、
次の日から、貴江が居るあのコンビニへは近づかなくなった。


LINEと電話で同じ時間を共有する日々。
そして時間の中で、叶夢が貴江の嫌がらせに精神的に追い詰められているのを知った。



これ以上、壊されたくなくて母を通して養父へと連絡をつけた。


俺だけだと、どうにもならないと父や兄貴、
そして兄の知人の弁護士も同席させて話し合いの場を持った。




貴江の今までの異常行動を全て報告し俺自身がどれほどに追い込まれて、
精神的に苦痛を感じて病んでいた時期があることを暁兄は専門家の立場で告げた。



『彼女を治療するなら早い方がいい。
 治療を受けるさせるつもりがあるなら病院を紹介してもいい』とまで暁兄は協力の姿勢を見せた。



その数日後、あの事件が起きた。

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