誰にも言えない秘密の結婚
お酒の飲めない私はウーロン茶、他のみんなはビール。
私がウーロン茶を注文した時、後藤さんが軽く舌打ちしたのが聞こえてきた。
飲めなくても合わせろって言われてるみたいに。
それから有本さんと西山さんが適当に注文していく。
しばらくして先にドリンクが運ばれてきた。
ドリンクを運んできた店員と後藤さんが親しげに話している。
知り合い?
なぜか私の方を見る店員。
「吉田?俺のこと、覚えてない?」
私の側に来てニヤニヤした顔でそう言ってくる店員。
それは客に向けてする営業スマイルとは明らかに違う笑顔。
……えっ?
私は店員さんの顔をジーと見る。
「俺だよ、中学の時の同級生の黒木(クロキ)だよ」
黒木?黒木……。
…………あっ。
「思い出した?」
なんで、この人まで……。
黒木和也(クロキ カズヤ)
後藤さんといつも一緒にいて、私をイジメていた主犯格グループの1人。
どんだけ狭いのよ、世間は……。
「後藤と同じ会社で働いてるんだって?」
私は何も答えなかった。
「はっ、吉田のくせに無視かよ」
黒木は吐き捨てるようにそう言った。
他にも何か言いたげだったけど、他のお客さんに呼ばれて舌打ちして席から離れて行った。