誰にも言えない秘密の結婚
どれくらい時間が経ったんだろう……。
早く帰りたい。
「お待たせ〜!これ、俺からの奢り」
黒木が料理を持って来た。
みんな喜んでるけど、私はまだ帰れないのかと口から小さな溜息が漏れた。
ーー帰ります!
そう言えたら、どんなに楽か……。
黒木がテーブルに置いたのは、たこ焼きだった。
人数分の5個のたこ焼きが乗ったお皿。
「これ、ひとつだけ中身がカラシだから」
黒木はそう言ってニヤリとした。
名前はロシアンたこ焼きと言うらしく、飲み会で出すと盛り上がる料理らしい。
みんな、盛り上がってる。
「誰から行く?」
坂上さんがそう言った。
「みんなが一斉に取るのは?」
西山さんの案に私以外が賛成する。
後藤さんの合図と共にみんなが一斉に箸を伸ばす。
最後に残ったのが私の分。
まぁ、こうなることはわかっていたけどね。