誰にも言えない秘密の結婚
トイレで吐き出し、洗面所で手を洗う。
鏡に映った自分の顔。
目は涙で真っ赤。
鼻は鼻水が出て真っ赤。
化粧はボロボロ。
まだ口の中がヒリヒリしてる。
早く戻らないと、何言われるか……。
涙を拭き、鼻水を拭き、トイレを出た。
座敷の前で靴を脱いでる時……。
「瀬名さん、やり過ぎじゃね?」
笑いながらそう言ってるのは坂上さんだ。
えっ?
どういうこと?
「あいつ、ムカつくからさ、これくらいやったってバチ当たらねぇでしょ。同級生に居酒屋店長やってるやついて良かったわ。じゃなきゃ、こんなこと頼めねぇし。それと、あいつが最後に取るってわかってたから出来たことなんだけどな。吉田がバカで助かったわ。美和?吉田を誘ってくれてありがとな」
「ホントだよ。今度、なんか奢りなさいよね」
あぁ、最悪だ。
そういうことだったんだ。
西山さんが私を誘ったのも、お礼がしたいわけじゃなく、このためだったんだ。
同級生がいる居酒屋を選んだのも、このため。
事前に黒木に連絡してたんだろう。
「それにしても、あいつ遅くね?」
「逃げたんじゃない?」
私は何も言わずに、座敷に入り、座っていたところに座った。
それからすぐにお開きになり、ほとんど食べてなく、ドリンクもウーロン茶1杯だけ、カラシ入りたこ焼きを食べさせられたのに、きっきりワリカンで請求された。