誰にも言えない秘密の結婚




「吉田?シャワー浴びてきたら?」


「シャ、シャワー!?」



藤原さんの言葉に社長が驚いたように目を丸くしてそう言った。


結婚の報告をしに来たのに、何の前触れもなくいきなりシャワーという単語が出れば誰だって驚くよね。



「空翔、お前さぁ、何変なこと考えてんの?吉田の服が汚れてるし、ストッキングも穴が開いて、このまま電車で帰らすのは可哀想だから事務所でシャワー浴びて帰ったら?って言っただけだよ。吉田は帰るって言ったんだけど、ついでに結婚の報告もしたいからって言って事務所に連れて来たの」



藤原さんは呆れたような溜息混じりにそう言った。



「いや、だって、いきなりシャワーとか言うからさ。俺、てっきり……てか、結婚の報告がついでって……普通、逆だろ?」


「事務所に仮眠室があるからって、そんなことしないよ?空翔がいるのに」



藤原さんはそう言ってクスリと笑った。


仮眠室、そんこと……。


えっ?そ、それって……。


藤原さんの言ってる意味がわかり、急に恥ずかしくなって顔が火を噴いたように熱くなっていく。



「俺がいなかったら……」


「それはわからないな。俺も一応男だから」



藤原さんの言葉に益々顔が熱くなる。


顔だけじゃなく、身体中が熱くなっていく。



「吉田?こっち来て?」



藤原さんはそう言って、私の手を掴んできた。




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