誰にも言えない秘密の結婚




「なぁ、拓海?」


「ん?」


「飯は?」


「忘れた」


「お前さぁ……」



社長が呆れたようにそう言って大きな溜息をついた。


藤原さんはコンビニへご飯を買いに行ったのに、私とコンビニ前で会ってしまったために、社長のご飯を買いそびれた。


私と会ってなかったら社長はちゃんとご飯にありつけたのに……。



「空翔は奥さんがいるんだから、家に帰って食べればいいでしょ?家もすぐ上なのに」



家がすぐ上?


社長の家も事務所もこのマンションってこと?



「空翔の家、この上なんだよ」



藤原さんは天井を指差しながら、私にそう教えてくれた。



「そうなんですか!?」


「あぁ。職場と家が同じマンションだなんて便利だよな」



藤原さんはそう言ってケラケラと笑っていた。




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