君は僕のもの
ツンッと頬を優しくつついてみる、
あ、こりゃ完全に寝ちゃってるよ…
次々と周りの人達が帰っていくなかで、あたしはただ一人動けずにいた。
「…樹?おーきーてー」
無反応。
「樹くーん!」
「ん…っ、……あ…?」
完璧に寝ぼけちゃってる。
「しっかりしてーっ!
もう映画終わったよ?」
そう言って周りに視線を送ると、樹がガバッと飛び起きた。
うわっ、驚いた…
「俺…、寝てた?」
だからそう言ってるのに…。
「もー、
寝てたみたいよ?寝ぼけちゃうくらいにねっ」
クスクスと笑いながらあたしは、樹の寝癖を手で直した。
「樹、今日の髪型いつもよりもっと格好良いねっ!」
別に深い意味?は無くて。
ただ率直に思ったことを口にした、
「…別に、」
短くそう樹は言うと、
突然あたしの手を握って歩き出す。
あ、きっと樹、照れてるんだ!!
そう思うと自然に笑みが溢れてしまう。
ちょっとだけ嬉しい気持ちになりながら、樹の隣を歩く。あたし。
「…ふふふっ」
「気持ち悪い」
思わず笑ってしまったあたしに対して“気持ち悪い”?
それはまた即答中の即答。
「ひ、酷い…」
樹は本当にお世辞という言葉を知らないみたい。
「嘘、でも変だった」
そう言うと樹は悪戯に笑って、その樹の手に引かれながら映画館を後にした。