キミの音を聴きたくて


「毎年わざわざありがとうねぇ」



ふと、リビングからお母さんの声が聞こえる。



どうやら誰かと話しているようだ。



それだけならまだ良かった。
早く部屋へ行けば済む話だった。




でも。



「いえ、僕が来たくて来ているだけですから」



その声を聞いて、一瞬で現実に引き戻された。




嘘でしょう?



この声は……天音先輩だ……。




どうしよう。
合わせる顔がない。



彼とは夏休みに入ってから会っていないし、会う予定もなかった。



だって私は、最低なことをしたんだから……。

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