キミの音を聴きたくて
────『私、陽葵の歌声が大好きなの』
お姉ちゃんはいつも優しくて、頼りがいがあって、強くて。
私の憧れだった。
────『また一緒に奏でようね。
陽葵の歌と私のピアノに勝てる人なんていないんだから』
得意げにそう笑って、励ましてくれた。
私はお姉ちゃんの奏でるピアノが大好きだった。
だからこそ。
「相川さん」
ビクリと肩を震わせた彼女のもとへ歩み寄る。
「一緒に歌をつくろう。
その曲で、金賞をとりませんか」
今までの私なら、こんな叶うはずもないことを口に出したりはしなかったはずだ。
それでも、また前を向けたのは。
間違いなく─────天音先輩のおかげだ。