キミの音を聴きたくて
「……ここだ」
今日もこの広場はたくさんの人でにぎわっている。
春に来たときは花が綺麗だったけれど、それらは既に枯れてしまった。
「……先輩は知っていたんですね。
私とお姉ちゃんがよくここで演奏していたこと」
このステージにあるキーボードをお姉ちゃんが弾いて、私が歌う。
幼い頃からそんな生活が日常になっていた。
毎回たくさんの人が聴きに来てくれて、本当に楽しかった。
あたたかい拍手をもらう度に、また唄いたい、という気持ちが強くなっていった。
「まあ、澄恋から聞いていたからな」
そっか。
お姉ちゃん、私との思い出を話してくれていたんだ。
なんだか頬が緩んでしまう。