偽りの婚約者に溺愛されています
「はい、あとこれ。靴。こればかりは俺の趣味で選ばせてもらった。婚約者の特権だよ」
彼が私の足元に置いた靴は、シンプルなパンプスだが真っ赤だ。
おまけに、踵に細く長いヒールがついている。
「私……これ以上背が高く見えるのが嫌なので、こんなに高さのある靴は履いたことがないんです」
もしかしたら、これを履けば智也さんの身長を追い抜くかもしれない。
思わず言うと、彼は驚いた顔をした。
「えっ。もったいない。君の背が高いことは、君の長所だろ。どうして隠すんだ」
「長所?」
そんなふうに考えたことなんてない。
「君のスタイルも、髪も、顔も。綺麗なんだから、これからは俺が見立てるからな。君はセンスだけがない」
「きゃー。もう、ほんと失礼ですよね」
褒められているのか、けなされているのか。
分からないままに靴を履いてみる。
「お。いいじゃん」
私の少し上から声がする。
よかった。追い抜いてはいない。
安堵する私の手をさっと繋ぐと、急に彼は歩き出した。
「行こう。俺も君の空腹病がうつった。なにが食べたい?」
「『空腹病』なんてないですよ。私はなんでもいいです」
部屋を出て、エレベーターに乗り込む。
ずっと繋いだままの手が、次第に熱く感じる。
何度も突き指をしてきた私の指は、節が太く骨ばっている。
彼はそんな私をどう思っているだろう。
ネイルサロンで綺麗に手入れをされた、同僚たちの手を思い出し恥ずかしくなる。
「あの。手を……」
私が放そうとすると、彼はぐっと力を込めた。
「何度も言わせるな。依頼者は俺。君は勝手に、俺の手をほどいちゃダメだ」
「ワンマンな依頼者ですね。偉そう」
彼はクスクス笑う。
「俺は偉いんだよ。そう思ってて」
そんなことを話していると、エレベーターの扉が開いた。
「あ、しまった。エレベーターの中でキスしそびれた。君が反抗的だから悪い」
ぼそっと耳元で囁かれ、顔がぼっと赤くなる。
「なにを言ってるんですか」
彼が私の足元に置いた靴は、シンプルなパンプスだが真っ赤だ。
おまけに、踵に細く長いヒールがついている。
「私……これ以上背が高く見えるのが嫌なので、こんなに高さのある靴は履いたことがないんです」
もしかしたら、これを履けば智也さんの身長を追い抜くかもしれない。
思わず言うと、彼は驚いた顔をした。
「えっ。もったいない。君の背が高いことは、君の長所だろ。どうして隠すんだ」
「長所?」
そんなふうに考えたことなんてない。
「君のスタイルも、髪も、顔も。綺麗なんだから、これからは俺が見立てるからな。君はセンスだけがない」
「きゃー。もう、ほんと失礼ですよね」
褒められているのか、けなされているのか。
分からないままに靴を履いてみる。
「お。いいじゃん」
私の少し上から声がする。
よかった。追い抜いてはいない。
安堵する私の手をさっと繋ぐと、急に彼は歩き出した。
「行こう。俺も君の空腹病がうつった。なにが食べたい?」
「『空腹病』なんてないですよ。私はなんでもいいです」
部屋を出て、エレベーターに乗り込む。
ずっと繋いだままの手が、次第に熱く感じる。
何度も突き指をしてきた私の指は、節が太く骨ばっている。
彼はそんな私をどう思っているだろう。
ネイルサロンで綺麗に手入れをされた、同僚たちの手を思い出し恥ずかしくなる。
「あの。手を……」
私が放そうとすると、彼はぐっと力を込めた。
「何度も言わせるな。依頼者は俺。君は勝手に、俺の手をほどいちゃダメだ」
「ワンマンな依頼者ですね。偉そう」
彼はクスクス笑う。
「俺は偉いんだよ。そう思ってて」
そんなことを話していると、エレベーターの扉が開いた。
「あ、しまった。エレベーターの中でキスしそびれた。君が反抗的だから悪い」
ぼそっと耳元で囁かれ、顔がぼっと赤くなる。
「なにを言ってるんですか」