偽りの婚約者に溺愛されています
ゴールから少し離れた場所から放ったシュートが、吸い込まれるように再びザッと入るのを見ながら立ち止まる。

このままでいていいはずなんてない。こうしている間にも、修吾との間になにかが生まれているかもしれない。

コートを出ようと振り返る。
はやる気持ちが、抑えきれなくなる。
どうしても、君に伝えたいと強く思う。偽りなどと言いながら、いつだって本気で君を求めていた。

早足になっていく。
一度社屋に戻り、まずは父に説明しなければならない。

「そんなに急いでどこに行くんだよ」

廊下に出ようとした瞬間、背後から声がした。

驚いて振り返ると、修吾がコートに転がったボールを拾い上げる瞬間だった。

「修吾。どうしてここに」

足を止めて彼を見る。
軽くドリブルをしながら、修吾も俺を見た。

「昔からムカつくんだよな。バスケも勉強もさ。俺が兄さんに勝てることなんか、なにもなかった。バスケを始めたのも俺が最初だったのに、兄さんしかスカウトされなかった」

パスしてきたボールを咄嗟に受け取る。

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