偽りの婚約者に溺愛されています

夢子さんを幸せにします!?


大きな門を見上げ、大きく息をついた。

何代にも渡る老舗文具メーカー『ササ印』の社長の邸宅ともなれば、この屋敷の大きさは妥当か。
俺の実家も自営をしているので、ある程度は大きな家だが、ここはそれを上回っているように見えた。

ここで大切に育てられた、ひとり娘である彼女は、確かに勝ち気で、ふわふわしたようなお嬢様とは程遠い。
だが、その心の奥にある純粋さは、まさに箱入り娘と呼べるものだろう。

社長は今、彼女を自分の元から奪おうとする男を、一体どんな気持ちで待っているのか。
自分の息のかかった、おそらく思い通りになるであろうお見合い相手を蹴散らし、彼女と結婚したいなどと言う俺を、間違っても歓迎などしないだろう。


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