偽りの婚約者に溺愛されています

そこまで話してから、彼女に渡すものがあることを思い出し、ハッとなった。

「あ、夢子。ちょっと待ってて」

彼女の家の横の駐車場まで来ると、俺は愛車のトランクを開けた。

「花なんかより、こっちのほうがいいんだろ?」

シュッと投げたものを、彼女は咄嗟に受け取った。

「バスケットボール。久しぶりに触ったわ」

驚いたように表情を輝かせ、嬉しそうに弾んだ声で言う彼女を見て、俺まで嬉しくなる。

「グローバルスノーの新モデルだ。なにが新しく変わったのかはよくわからないけどな」

彼女は、ピカピカのボールを早速地面につきながら、俺を見た。

「これは新モデルなの?言われてみたら、すごくいいわ。手に吸い付くみたい」

「それは新品だからだろ。おそらく、新しい機能の問題じゃない」

ふたりで笑い合う。

「さすがに家に持って入るのはまずいかと思ってさ。俺まで社長に怒られたくはないからな」

「ありがとう。嬉しい。大切にします」

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