1 week
私は日向くんの横顔を見て幸せな気持ちになる。

あと10歳若かったらこんな男の子と恋をして
2人で映画を作ったり
本を読んだりして過ごしたいなんて思ってしまう。

ぼんやり見ていると日向くんがこちらを見て
私の視線に気付いて微笑んだ。

思わず恥ずかしくて下を向いてしまう。

「秋吉さん、5時半過ぎましたよ。」

店主に言われて我に返った。

私は帰り支度をして
店主に挨拶をして本屋を出る。

「お先に失礼します。」

「はい、ご苦労さま。

秋吉さん、ご主人と美術館行ってくださいね。」

念を押されて気が重くなった。

本屋を出て、自転車の鍵を外していると

「夏月さん」

と日向くんが私を呼んだ。

「え?どうしたの?」

「もう帰るんですか?」

そんな事を聞かれただけで動揺してしまう。

これから何処か行きませんか?なんて言われたらどうしようかとあり得ない妄想をしてしまう。

「うん。今から娘を迎えに実家にね。

日向くんももう帰るの?」

「はい、これからバイトです。」

「どんなバイト?」

日向くんは少し恥ずかしそうに言った。

「通販のカタログのモデルです。」

「えー?モデルなの?」

日向くんはその声に驚いていた。

「声、大きいです。
モデルとか恥ずかしくて言えませんよ。

雑誌とかコレクションのモデルとかじゃなくて
カタログですから。」

それにしたってモデルはモデルだと私は思った。


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