1 week
夜、宇宙が帰ってくるのを待った。

宇宙はその夜少しだけ遅くてお酒を飲んでいたみたいだった。

「お帰りなさい。」

「ただいま。」

「あ、日向くんの件ありがとう。」

「日向くん?」

私は何かいけない言葉を言ってしまった気分になった。

「あの子、日向くんて言うんだよ。
可愛い名前だよね。」

宇宙は何も言わずに私を呆れた顔で見てる。

「宇宙って書いてソラって読むのも素敵な名前だと思うけどね。」

取って付けたような褒め言葉が宇宙にも分かったようで視線は更に冷たくなった。

宇宙とはどうしても上手く話せない。

私は美術館のチケットの話を今日も話せない気がしている。

宇宙がお風呂に入ってる間、
美術館にどうやって誘おうか考えたけど
結局ストレートに誘うことにした。

断ってくれたらそれでいい。

お風呂から上がった宇宙に冷たいお水を渡しながら話しかける。

「あのさ、今日古本屋の社長さんがね…
美術館のチケットくれたの。
ご主人と行けって…

今度の宇宙の休み有給取ってでも二人で行けって。」

「何で?

この前、万引き犯捕まえたお礼とかなら
そういうの受け取らないから。」

「そうじゃないと思うけど…
宇宙、絵とか興味ないよね?

そう言ったんだけどさ、美術館のカフェのカレーが美味しいからって。

訳わかんないよね。」

宇宙はカレーが大好きだ。

でも美味しいカレーなんてわざわざ美術館で食べなくてもって言うだろうと思った。

「あ、聞いたことある!
あそこのカレーうまいって…
絵には興味ないけど…カレーは食いたいな。」

予想外に宇宙はカレーに惹かれて一緒に行くと言った。
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