偽りのフィアンセ
「誰~?このコ。親戚~?」
話し方まで馬鹿丸出しな女の問に、『ヤツ』の視線がゆっくりとあたしに移動する。口元にうっすらと笑みを浮かべ……
「お、暫く見ない間に綺麗になったな。サヤ」
ヤツは女に負けないくらいの場違いな言葉を発した。
『変態糞野郎』の誕生だった。
「サヤ」
柔らかい声と共に、カナメが背後から優しくあたしの肩を抱く。
この場から遠ざけようとしているのかもしれないカナメの手を振り払い、オッサンにひっついて離れない目の前の女を突き飛ばすと、倒れ込んだ女が小さく声を上げた。周囲の視線が女とあたしに集中する。
「パンツまで馬鹿丸出しかよ」
倒れて丸見えの透け透けの紫のパンツ。鼻で笑ったあたしの言葉に、女が顔を赤くしてソレを隠す。
一応羞恥心は持っているらしい。
女は目をつり上げてあたしを睨んだ後、媚びるような眼差しでオッサンを見上げた。
『あたしに恥を掻かせたこのガキを早く追い出して』そんな視線だった。
だけど、オッサンがあたしを責めることはなく、何が可笑しいのか、ずっと口元に笑みを浮かべている。
あたしはコイツのこの顔が嫌いだった。人を馬鹿にしたような、見下しているような、嘲笑うかのような……何を考えているのか、わからない顔。