偽りのフィアンセ
「アンタだけじゃない」
「……はぁ?」
静かに言葉を吐き出したあたしを、女が怪訝そうな顔で睨む。
「このオッサンが『飼ってる』のが、アンタだけじゃないってことくらい分かってるよね?」
「……」
「サヤ、『オッサン』はやめなさい」
カナメが後ろから注意してきたが、その声は明らかに笑いを堪えている。
「……この『変態』が何人飼ってるかなんて知らないし興味もないけど」
あたしが言い換えると、カナメがついに吹き出した。オッサンがそんなカナメを半目で睨む。
どうやらツボにハマったらしいカナメは、まだ静かに笑っているようだったが、あたしは構 わず言葉を続けた。
「アンタ以外の女が何で此処にいないかわかる?」
……まぁ、わかってないからいるんだろうけど。
「身の程を弁えてんだよ」
すぐそこであの人が眠っている。
「自分が家畜だとも、気付かずにノコノコ恥さらしに来る馬鹿がアンタしかいなかっただけで」
元々細かったその体は更に細くなっていて、元 々白かったその肌は、血の気がないせいか透き通りそうなくらい青白くて……。
「此処は、家畜が出入りしていい場所じゃない」
だけど、やっぱりあの人は綺麗だった。