エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 19時になるとすぐに読経が始まった。

 とりあえず、中条の遺体が見られる程度に整ったので、大輔は満足していた。

(あのままだったら、まるで殺されたと言わんばかりの形相だったからな。)

 今まで、客の接待に追われて美佐子と話しをする事が出来なかったので、大輔はお経に紛れて、美佐子に聞いた。

「一体、どんな手を使ったんだ?」

「聞かない方がよろしいですよ。」

 そう言われるとますます気になる性格の大輔は、

「構わん。教えてくれ。」
と再度、美佐子をせっついた。

 美佐子は仕方ないと言わんばかりに

「瞬間接着剤でくっつけて開かないようにしたんです。」

とサラっと言った。

「瞬間接着剤?」

 大輔は心の中で

(俺は絶対、目を閉じて死のう!)

 と、思うのだった。
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