エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 テレビ局の車は10時を過ぎると、斎場の方での準備があるからと、屋敷前を出発した。

 黒沢はそれを見届けてもまだ迷っていた。

 美佐子は自分の秘書になれ!と言ったが、黒沢が美佐子と組んだのは、ヤバイ事が出来るからだった。

 モチロン美佐子を『愛してる』と言った気持ちに偽りはないのだが、所詮、美佐子も『普通の女』だったのだと思うと急に色褪せてしまった。

 しかし、

「取りあえず今は斎場に行こう!」

と辛うじて思い直した。

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