H ~ache~
「…っ」
息苦しさに早瀬の胸を押しやると、早瀬は離れたがすぐにまた唇を重ねた。
先程とは違い、ゆっくりとした愛撫に環は無意識に応えていた。
長いキスに環は再び息が苦しくなり身を捩ろうとすると、早瀬は唇を離し名残惜しそうに頬にキスをした。
再び車を走らせたが早瀬も環も一言も話さなかった。
環は流された事が恥ずかしく、なんとか自分を落ちつかせようと流れる夜景を見ていたが、同時に窓に写りこむ早瀬の端正な横顔に視線が行くのを止めることができなかった。
車は見慣れないマンションの地下駐車場に進み、広い駐車場の一番奥のスペースに車を停めた。
「降りろ」
(タワーマンションの駐車場…?)
環のスーツケースを取り出した早瀬は、戸惑う環の手を取り奥へと進んだ。
そこは地下駐車場用のエントランスになっており、エレベーターが5機備えられていた。
4機は並んでおり、残り1機は少し奥まったところにあった。
カードを翳す案内がマークで表示されたパネルがあり、早瀬はそのパネルへカードを翳すとエレベーターの扉が開いた。
中には行き先を選ぶ階数毎の表示パネルは存在せず、なにもせずにエレベーターは動き出した。
「このまま帰すと明日普通に出勤しそうだからな…明日は午後から出勤しろ」
考えていたことを見透かされて環は早瀬を見上げた。
(明日は明日で仕事が山積みなのに…)
「不満か?」
「…いえ」
(残業すればいいか…)
環はそう考えて自分の足元を見た。
繋がれた手の指を絡められ、環は抗わずにされるままに指を絡めた。
エレベーターが止まり、扉が開くと早瀬は歩き出した。
そのフロアに玄関は1つしかなく、早瀬はポーチを開けると玄関の錠に鍵を差し入れて扉を開けた。
(広い…)
「入れ」
リビングに通され、その広さと窓から見える夜景に環は圧倒された。
都心の一等地にあるタワーマンション。
恐らく最上階であるここからの展望は視界一杯に光が煌めいていた。
「綺麗…」
「気に入ったか?」
コクリと頷き窓辺に寄ると夜景を眺めた。
(ここの部屋から見える東京タワーも綺麗)
環の部屋からは方向が合わずに東京タワーは見えない。
夜景から自分が住むマンションとここがあまり離れていないことを知った。
「環…」
耳許で名前を呼ばれ、振り返ろうとすると背後から抱きすくめられた。
背中に逞しい体を感じ、思わず俯こうとすると顎に手をかけ環を自分に振り向かせた。
「これからお前を抱く……お前の気持ちがオレに向いていないのなら抵抗しろ」
突然された宣言に、環は思考が止まった。
早瀬に惹かれているのは事実だった。だからといって唐突に抱くとは…
「沈黙は肯定と思うぞ」
「…っ」
待って欲しいと伝えようと唇を開きかけたが、その言葉は早瀬の唇にのまれてしまった。
環は抱き抱えられてキングサイズのベッドが置かれた寝室に連れてこられた。
早瀬は労るようにベッドに寝かせるとキスをしながら環の服を脱がせていく。
美しい顔にしなやかで美しい肢体。
肩に胸にとキスをしながら環を愛撫していった。
「まって…」
「待たない」
うつ伏せにさせ背中にキスを落としていると、環が途切れ途切れに何かを訴えようとしていた。