上から先輩







前を歩く先輩と私の間には1メートル程の距離ができている。


さっきからずっとこの調子。


後ろ姿からでもわかるくらい、不機嫌オーラが出まくっている。


声をかけようか、それともそっとしておくべきか……。


悩んでいる間にも先輩と私の間には更なる距離ができていくようだった。




「おい、橘」




突然クルリと振り返った先輩にビクリと体が反応する。




「な、何ですか」


「……どっか行きたいとこあるか」


「え?」


「行きたいとこあるかって聞いてんの」


「あ、いや……特にないです」


「じゃあ、何か欲しいもんは」


「……ない、かな」


「………」


「………」


「お前、デートする気あんのか」


「いや、ないです」




キッパリ言っておいた。


だってこれデートじゃないし。っていうか先輩が一方的に押し付けてきたんでしょうが。



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