【完】恋愛エゴイズム
もう、何も言うまい。
そう決めて、七彩の元にあった自分のプリントを、半ば奪うようにして自分の方に取り返す。
 
『相川陸』
 
氏名欄のオレの名前の下に、こいつらしい丸っこい字で、そう書き足されているのがなんともむず痒い。
それをかき消すように、消しゴムで乱暴にプリントを擦った。
 
「あーぁ。消しちゃったー」
 
「ばーか。あのまんま出す訳にゃいかねぇだろうが」
 
「ん…。あたしは別にいいんだけどなぁ?」
 
「ふざけんな。あのまんま出したらオレの生き恥だ!」
 
「ひどいなぁ…。侑悟ってば。でもつれない侑悟も好きだよ?」
 
「…勝手にしろよ」

「はぁい…」
 

そこで、担任が入ってきてHRが始まった。
何だってこう、気持ちが悪いザワザワして仕方ねぇのか。
 
その答えは分かってる。
けど、けして俺からは言わない。
 
 
俺から好きだとは。
 
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