プラス1℃の恋人
「須田ァ!!」

 耐え切れず、千坂は目の前の魅惑的な鎖骨にかぶりついた。
 白い首筋に唇を這わせ、若い女の肌を堪能する。

 強く吸ってはいないはずなのだが、白磁のようなきめ細やかな肌に、うっすらと赤い跡がついた。

 ――やべ。

 慌てて指先で首筋をこする。
 すると須田は、「くすぐたぁい」とくすくす笑った。

 なんだこいつ、かわいいじゃないか。

 火照った頬にこわごわキスをする。
 その途端、ものすごい力で引き寄せられた。

 須田の熱く火照った肌が、千坂の欲望をさらに煽る。

 押しつぶさないように腕を張りながら、千坂は静かに唇を重ねた。

 吸い付くようなやわらかい肌。
 甘い芳香が、脳内の神経を狂わせる。

 もういちど、今度は長めに口づけてみた。
 腕のなかにいる須田は、まったく抵抗せずに、しっとりと千坂の唇を受け止める。

 キュロットスカートから伸びたまっすぐできれいな脚が、誘うように千坂の脇をさすった。
 そろりと太ももに手を這わすと、「いやん」と腰をくねらせ、高まっている股間を刺激する。

「須田ァァァ!」

 リミッターが崩壊した千坂は、野獣のような雄たけびをあげながらのしかかった。
 飢えた獣のように、きれいなラインの鎖骨にかぶりつく。

 まだ35だ。男として枯れてはいない。
 性欲だって食欲だって絶好調だ。

 それに、こいつも女としては悪くない。
 むしろ好みのタイプだ。
 もしも責任をとれと言われたら、潔くとってやろうではないかっ!
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