気付いた時には2人の君が・・・
入院
彼女が入院した。
それを知ったのはたまたまだった。
「桜野さん入院してるらしいよ」
「そうなんだ。でもいなくてもあんまり変わらなくない?」
「確かにね〜〜」
「そういえばさ、」
そんな会話が休み時間のトイレに行っている時に聞こえて来た。
その日は彼女が休んで2日目で、連絡を取ったときは平気な様子だった。数学の授業で突然に当てられたこと、お弁当に嫌いなトマトが入っていたこと、そんなことを話した。
変なところなんてなかった。
だから、入院っていっても軽いものだと思っていた。
僕は入院しているかもと知ったその日、可憐に場所を聞きつけすぐに病院に向かった。
病室に着いたとき、久しぶりに見た可憐はいつものように柔和な笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりだね」
「大丈夫なの?」
ゆったりとした彼女の空間を他所に彼女の具合を、確かめる。
「うん。大丈夫。なんていうかな、検査入院みたいな感じ?」
「本当に?」
「それなら、よかった。いつ頃に退院になりそう?」
「それはまだわからないかな。二重人格の子が少ないし、治るってことも珍しいらしいから安全をとってだってさ」
「そっか、じゃあまた、元気になるんだね」
「うん。まだ最期の別れなんかじゃないよ。そんなに悲しそうにしないでよ」
「そうだよね、それならいいんだ」
「これから検査があるんだ。だから、、、また今度来てくれる?」
「そうなんだ。じゃあまた今度来るよ」
「よろしくね、、、」
僕は一度も座ることなく、病室を後にした。
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