ひとりよがり

1週間、慣れない職場で診察診察の繰り返しが終わり、それでも片付かない書類などをするために土曜の午後を使ってまとめていた。
僕以外に病院内にいたのは手術のための医者。顔を合わせることはなかったが、廊下からは慌しい足音がしていた。
中庭を挟んだ建物では患者たちが廊下で立ち止まり話していたり、子供たちが廊下を走り回っているのがみえる。
中庭には散歩を楽しむ人たちと真ん中にある台を囲む子供たち。
窓を少し開けてみると子供の口からはわくわくとした言葉で「美琴ちゃん美琴ちゃん」と聞こえた。
（美琴ちゃん？）
「あ！きたー！」
左側から、ピエロの格好をした美琴ちゃんが出てきた。
子供たちは一斉に美琴ちゃんを囲って、手を引っ張っていた。
遠くてなにを話しているかはわからないけど、楽しそうなのは賑わい方でわかる。
赤よりの紫の髪は太陽の光を吸収し輝き、それとともに台にもスポットライトのように光が落ちた。
僕は思わず、窓を全開にし、身を乗り出しながら外を見た。
赤青白黄の小さなボールを出すとマジックを始め、ボールをおもちゃに変えたり、