偽りの先生、幾千の涙


私は貰った名刺の電話番号を頭の中で繰り返す。


今伊藤は家にいる。


家に行くのは流石に嫌だから、今から電話して、出来る事なら協力するから目的を教えてくださいって言う。


そんな素直に教えてくれるかは分からないけど、案外良い方法かもしれない。


でも…


エレベーターが1階まで来たから、中に入って最上階のボタンを押す。


静かに上へ行くエレベーターの中で私は思った。


今日は助けてもらったんだ、変に詮索するのは止めよう。


それに…どうしてだろう、本当の事を知りたくないような気持ちも何処かから生まれてきた。


もし真実が分かった時、私や伊藤はどうするだろう。


伊藤は学校を去るのだろうか、そして元通りの生活に戻るのだろうか。


それともやっぱり私が何か関係していて、何処かに連れ去られて、殺される?


あとは脅されるとか…ダメだ、悪い事しか頭に浮かばない。


でもきっと、伊藤がいなくなる以外のハッピーエンドはありえないだろう。


そう考えると、やっぱりこのままでもいいのかもしれないと思う。


恋愛とかそんあ甘ったるい感情ではないけれど、今の生活をもう少し続けてもいいかもしれないと思っている自分がいる。


疲れるけど、刺激はあるし、常在の取り巻きの数は少し減るし、良い事もあるの。


だから…



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